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甲斐名勝志
四巨麻郡
金峯山、〈属山梨郡〉絶頂に祠有、蔵王権現お祭る、御岳の社の本宮也と雲、国民八九月の頃登る、水精磁石等お産す、荒川の源は此山より出る、又北へ流るヽ水は、信濃の佐久郡へ出、千曲川となる、一説に、此山おいくかのみねと雲は、風雅集に、順徳院の御製、ちくま河春行水はすみにけりきえていくかの峯の白雪、といへる御歌より雲なるべし、予按るに、唯きえていくかに成ぬる峯のしら雪と雲意成べし、金峯山の名お、いくかのみねと雲は、後人の鑿説ならん、