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類聚名物考
地理十三
比叡山 ひえのやま 〈又〉日吉 〈又〉日枝 近江国 比叡、稗叡は仮名なり、本は日吉と書り、是も仮名の訓なり、日吉山の神お、今は日吉(ひよし)と訓て、山おば日吉(ひえ)の訓なるお忘れて、比叡お正字と心得て、俗には字のまヽにひえいと雲ふ、又は叡山なども雲ふは、いよ〳〵誤りお重ねしなり、住吉も、古へすみのえにて、吉おえの仮名に用いたり、今も吉方おえほうと訓は、音訓相交へたれども、吉の訓は、古へおうしなはざるお、俗には得方とさへ書たがへたり、この類甚多し、心お付ておろそかに見る事なかれ、大ひえ小ひえの山は、一山の中にて、嶺の大小によりて雲ふなり、