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笈雉随筆

都の富士 比叡山は、江州お表として、京より見る所は後面也、されど洛中より見るけしき、駿河の名山に妨仏たれば、富士の名あり、其眺望いづくにもあれど、堀川の西、一条戻橋の南、鍜冶対馬様といふ者の門より見る処、千門万戸の上に高く聳へ、家々の庭の松の梢に、雪の高根の名残なく見へ渡れるは、田子の浦半の眺めよとあやまたる、