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信府統記
四佐久郡
八け岳、峯通国境、〈甲斐国にても同名、〉平沢村出口道の境川よりは酉の方に当り、金峯山よりは酉戌の方に当る、此八け岳、当国の方、北面峯の半より佐久郡、西は諏訪郡なり、〈右八け岳、享保七年壬寅山見通しのこと命ぜられし所なり、此山にて磁石の働き成難く、方角見定められざる由、見分の者申に付、再び公儀より、若し磁石山にてもあるべきや見届くべき旨命ありて、正真の磁石お渡されたるに依て、重て差遣すの所に、果してこれお見出し、取り来て上れり、但し本の石より其気少し弱しといへども、紛れなきものなりしと、此山峯総て八つあり、中に権現岳と雲嶺ありて、此峯に件の石ありけるとなり、〉右甲州境八け岳の峯より、遥に亥子の方に当れる処にも、亦八け岳と雲ふ山あり、〈此峯も亦八つあるが故に爾雲ふ〉是までの間山深くして嶮阻なるが故に、諏訪郡へ越すべき線路一け所もなし、何れも山山峯通お堺とす、是より酉戌の方、たてしな山の南、麦草と雲ふ所、諏訪の方にやしか峯と雲ふ山あり、此等の峯通郡界なり、此西より北へは小県郡の界、東は横笹山の西にて、境目越口道前に見えたり、