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甲斐国志
二十九山川
巨摩郡逸見筋 一八が岳 長沢、西井出、谷戸、小荒間諸村の北に在り、其南麓、西は小荒間村の北花鳥屋(はなとや)より、東は界川に至る、四五里の間、諸村入会の草場なり、峯巒岝崿として八葉に分るヽ故に名とす、其一峯お檜が岳と雲、雷神或は石長(いはなが)姫お祀る、三代実録に所謂檜峯の神なりと雲、谷戸村より三里許あり、毎年八月十一日お祭日とす、凡そ八月お登躋の候とす、本州の諸高山皆な然り、権現が岳、小岳、赤岳、麻姑巌、風の三郎が岳、編笠山、三つ頭、其余種々の称呼ありと雲、其山脈北へ延て、信州蓼科(たでしな)山、大門嶺、和田嶺等に接す、其中間に神池あり、山の東面は佐久郡、西面は諏方郡なり、又山中に烽火台あり、富岳岳の絶頂より望むに、此山及び白峯、金峯の三山は、本州諸山に卓絶して雲表に見はる、又上州武州の地よりも、遠望して認むべしと雲り、其霊秀高大なる知るべきなり、良材、黄連、石耳、磁石等お産す、又泉源多くして、国に益あることは、前後に録するが如し、