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信濃地名考

立科山〈非名処〉佐久郡蓼科山は、三のこほりによこたはりて、〈諏方小県〉登る事おの〳〵三十里、水のひヾきのあはれも過て、さえだおしおりぬすヾお分て山に入、いかづちの床なんどいふ所お経て、〈酉陽雑俎所謂潜竜地乎〉背向(そかひ)にいづ、是より仰ばまかべなす峯あり、磐石お階(きだ)にふみて登こと三百歩、姫子といへる松のばへわたりて、阻(いしやま)おつヽみ、霧もる日に映ずれば、衣はみどりにそみて、神彩たとへおとるにものなし、すべて頂に土なし、磐石は瓦お鋪たる如く、松は席(むしろ)おしくに似たり、鳥ありて其中に栖む、援にあめおいたヾき、雲お踏て、蓼科の神祠おあがめまつる、又四時此峯に白雪あれば、飯盛の山ともよべり、〈甲賀三郎巌、穴獅子岩、石井、無音川等の地名あり、〉