[p.0833]
東遊雑記
二十
岩鷲山は盛岡より西南の間に見へて、行程四里、雲霧峯お隠す時は、駿州富士山に似たり、世に奥の富士と称せるは此山の事にて、土人は南部の富士とて、津軽の岩城山よりくらべ見れば、此山余程低し、両山ともに富士に似たるとて、富士の名おいへども、駿州の富士より見れば、十にして其二つならんか、予委しく他方の高山と称せるお一覧して、ます〳〵駿州の富士山に感じぬ、地理に委しからぬ人の愚眼笑ふに絶たり、森岡より東南に南昌山と称せる山、南部第一の高山有、又姫け岳といふ山も高山にて、岩鷲山に相対せり、