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諸州採薬記抄録
出羽国 鳥海山は日本四の高山なり、麓の村より山上まで、道法六里余有、四里半登、古来より四季共に雪消ずといへり、実に雪にて築立たる山の如く見ゆる、享保六年丑年御用に依て予彼国に下り、閏七月朔日此山に登る、午の刻山の六七分に至る比、頻りに大風雨起り、山鳴谷響き、砂石お飛し、風雨面お搏、起居動静心に任せず、雨巌お洗ひて、千尋の谷に落る水は滝の如し、此山中に方一里程の湖水有、山の左右に異国までも続くといへり、限なき荒海なり、〈◯下略〉