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廻国雑記
白山禅定し侍りて、三の室に至り侍るに、雪いと深く侍りければ、思ひつヾけ侍ける、 白山の名に顕はれてみこしぢや峯なる雪の消る日もなし、下山の折ふし、夕だちし侍りければ、 ゆふだちの雲はしらねの雪げかな、これより吉岡といへる所にしばらくやすみて、旅ならぬ身も仮初の世成けりうきもつらきもよしや吉岡、下白山といひて、本の白山の麓に、剣といへる所侍り、そのかみ剣飛来しより、此名お残しけるとなん、 しら山の雪のうなる氷こそ麓の里のつるぎ成けれ ◯白山の事は、火山条及び神祇部白山咩神社篇に在り、参看すべし、