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東遊雑記
十六
蝦夷の地の、内浦け岳といふ山、平生大ひに燃る山にして、火しき煙立上る事也、戸切知よりも能見へ、少し東の方へ行て、有川と雲所より見れば、正面に見る山にて、行程三里と雲とも、径は僅に思わるヽ也、予見る所の、肥後の阿蘇け岳、豊後の鶴見が岳、薩摩の四まんが岳、信州浅間が岳、何れも燃る山にして、平生〓お見る事なれども、今見る内浦け岳にくらぶれば、燃る勢ひ此内浦け岳第一なり、仙台の林子平、此内浦け岳の燃る事も洩し、内浦け岳の所お取違へし事也、