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徳川禁令考
四十三農事
正徳三巳年 諸国御料所諸百姓江被仰渡候御書付〈◯中略〉 一公儀の山林はいふに及ばず、百姓所持之山林といふとも、竹木猥に伐採べからざる事、是又古来の定法有之処に、近年に及び村方の普請有之時、其普請の場所相応せざる大木、其入用之外のもの数等猥に伐採り候由相聞え候、自今以後たとひ其奉行役人以下申付候とも、心得がたき事有之においては、早速御代官に申届くべき事、附前々竹木伐採り候跡にて、苗木等植立ざる所々有之由相聞え候、是又古来よりの定法に違ひたる事に候間、公儀の山林はいふに及ばず、百姓所持之山林に候とも、其時節お違へず苗木等植付候様にすべき事、〈◯中略〉 右条々、去年中被仰出候諸国御料巡見之面々、見及び聞及び候所に就て、急度御穿鑿お遂らるべき事共に候得ども、当御所始の時にも候故、別儀お以、先其事に及ばれず候、自今以後、御国目付巡見の御役人等、度々に可被差遣御事に候間、若其時に至ても、隻今迄之様子相改らざる所有之においては、重犯の罪科のがるべからず候、御料所諸百姓急度此旨お相心得候て、相慎み守るべき事に候、然る上は其村之名主庄屋等之事はいふに及ばず、たとひ御代官所手代役人等之事に候とも、公儀御制条に違犯之輩有之においては、其事の子細ありのまヽに御代官に訴申すべし、御代官中宜敷裁許之上訴出候者のために、其怨お返し候輩無之様、其沙汰可有之候、若又訴申出べき事有之おも隠し置て、御仕置之事、末々之所に至りては行届かず、百姓どもの難儀も不相止候儀に仕なし候事於有之は、年月お経候後に相顕れ候といふ共、隠し置候輩も、是又違犯之罪科に同じかるべき也、 巳四月 諸国御料所諸百姓