[p.0941][p.0942]
都のつと
ひたちの国へ帰り侍りしに、むさしのヽはてなき道に行くれて、その夜は道づれの僧などあまたありしも、みなかりそめの草の枕おむすびて、とヾまり侍りしほどに、此野はむかしもぬす人ありてこそ、けふはなやきそともよまれけるときヽおきしかど、さまでやはとおもひしに、苔の衣おさへひきてかへりし、白波のあらかりしなごりに、いとヾ旅の床もものうくこそ侍りしか、 厭はずばかヽらましやは露の身の憂にも消ぬ武蔵のヽ原