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東関紀行
浮島が原は、いづくよりもまさりてみゆ、北はふじの麓にて、西東へはる〴〵とながき沼あり、布おひけるがごとし、山のみどり影お浸して、空も水もひとつ也、蘆かり小舟所々に棹さして、むれたる鳥おほくさはぎたり、南は海のおもて遠く見渡されて、雲の波煙の浪、いとふかきながめなり、すべて孤島の眼に遮るなし、わづかに遠帆の空につらなれるおのぞむこなたかなたの眺望、いづれもとり〴〵に心細し、