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甲斐叢記

牧名 牧の字和名抄に無馬岐(むまき)と訓めり、新井氏はまきのまは馬なり、きとは置なり、馬お放ち置の義なりといへり、或説に梅おむめといひ、馬おむまといへる類は正しき古言にはあらず、和名抄の頃既に訛りたるものなりといへり、〈欽◯大森〉按に牧はうまきの略なり、馬城(まき)或は馬飼(うまかひ)なり、うまのうお省き、かひの約きなり、原野に馬お放飼(ぱなちかふ)といふ義なるべし、楊子方言に牧は飼(し)也とあり、注に謂放飼牛馬也、飼畜養也とあるお併せ見べし、又或説に馬城おとりこめとも訓めりと雲ふ、茅岳(かやがたけ)の麓入会場にこの地名ありて馬城と作(か)けり、小笠原御牧の接近なれば必ず牧なるべし、