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東雅
二地輿
泉いづみ 出水也、飛泉おたきといふはたきつ也、〈たきといふ、きの音に、つの音お納めて呼びしなり、〉旧事紀、日本紀に見えし湍津姫命、古事記に多岐都比売命としるせしが如き是也、たきつとは即立水也、万葉集抄に、水にたちみづ、ふしみづといふあり、伏水とは出て流るヽ事なき水おいふ、立水とは湧出て流るヽ水也といひけり、〈たきといひたきつといふは転語にて、つとは、万葉集抄に、つといふは水也といふ即此なり、詞助にはあらず、〉延喜式の祝詞にも、また中臣の祓の詞にも、高山の末、短山の末より、佐久奈谷に落滝津、速川の瀬など雲ふ事もあるは、たきつといふは、即激(たぎる)の謂にて、沸泉の義なる也、古に湍の字読てたきとせしは、飛湍の義によれるなり、後に湍の字おば読てせといひ、滝の字読てたきといふ、倭名抄には唐韻に南人名湍曰滝の説お引用ひたり、