[p.1040]
有馬名所鑑

湯本坊舎 仁西上人温湯再興の時、十二坊舎おたて、諸国より集る湯入の次第お、彼十二坊に奉行させられしと也、かヽりければ、湯入のかたく跡先おあらそひ、或は湯壺より久しく出やらぬ者ありて、とく出よなどいひあがりて、闘諍度々に及ければ、いづれの時よりか婢女おこしらへ、湯入の支配させつヽ、今に其わざ替言なし、されば湯壺よりおそくあがる者ありて、縦あらけなくいかり、わろ口いふにも、もとよりやさしきかたある女の事なれば、いらふ人もなくして、年々二六時中難波のよしあしに付ても、優々としていとめでたし、