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秋保日記
寛延四年、公務のいとまあるころ、城西の秋保村(○○○)にまかりて温泉に浴し侍らんとて、八月三日になんおもむき侍りけるに、中塚氏広茂のぬしも、同じくまからんとて、草庵に来りていざなひ出ぬ、朝のほどより空くもりて、やがて小雨ふり出ぬれば、雨つヽみなとどかく物して行くまヽに、ほどなく仙府お離れて、村径田畝に道おもとむ、〈◯中略〉 申の時ばかりに、雨こまかになりぬ、猶空翠客衣おうるほして、よもおのぞむに、朦朧たる中烟り一村立のぼれるこそ、これなん温泉の出る所ならめと、いとうれしくて、とり〴〵道いそぐまヽに、ほどなく行つきぬ、以実、 かりぬべきやどりやそれと夕烟一むら見ゆる山もとのさと