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傍廂
後篇
今神の湯 出羽国最上郡新庄の戸沢侯の領内に、温泉五箇所ある中に、今神の湯には、熊野神社ありて、入湯の男女昼夜狭き所におしこり居る故に、密通する者あり、人の金銭お盗みかくしおく者あり、さる時は、いづくより来るらん、蛇出でヽ密通の男女へまとひつき、盗み隠したる上に蟠り居て、忽に露顕する故に、人々あつまりてさるおこの者は、早くふもとへおひやらへりとなん、おしへ子なる諏訪光忠が委しくしりてかたれり、