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東遊雑記

湯温海といふ所は、海浜より十七八町も山分に入、此町は中々よき所にして、温泉ありて家ごとに湯つぼおして、旅人お入る事也、唱家数十軒、一家に三十人も四十人も売女の居る事なり、いづれの所より此所へ遊びに来る人のある事にて、売女の多き事にやと尋るに、功ある温泉にて、入湯せるものも数多にて国中よりも集る所といへり、町の上には巌々たる山計、古人湯温岳と称、山の風俗至てよし、