[p.1079]
奥の細道
山中の温泉に行くほど、白根が岳跡にみなしてあゆむ、左の山際に観音堂あり、花山の法皇三十三所の順礼とげさせ給ひて後、大慈大悲の像お安置し給ひて、那谷と名付け給ふとや、那智谷汲の二字おわかち侍りしとぞ、奇石さま〴〵に、古松植えならべて、萱ぶきの小堂、岩の上に造りかけて、殊勝の土地なり、 石山の石より白し秋の風 温泉に浴す、其功有馬に次ぐと雲ふ、 山中や菊はたおらぬ湯の匂