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山家集
下雑
しほ湯にまかりたりけるに、具したりける人、九月晦日にさきへ上りければ、つかはしける人にかはりて、 秋はくれ君は都へかへりなばあはれなるべき旅のそらかなかへし 大宮の女房加賀 君おおきて立いづる空の露けさは秋さへくるヽ旅の悲しさ 塩湯いでヽ京へ帰りまうで来て、古郷の花霜がれにける哀なりけり、いそぎ帰りし人のもとへ、又かはりて、 露おきしにはの小萩もかれにけりいづち都に秋とまるらん かへし おなじ人 慕ふ秋は露もとまらぬ都へとなどていそぎし舟出なるらん