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我国の地勢、幅員狭隘、加ふるに山脈其脊梁お走り、殆ど平野と称すべきものなきお以て、大河の洋々たるものお見ず、概ね半ば渓流にして船舶お進むるに便ならず、故お以て大川と称するものにして、猶ほ急流矢お射るが如きあり、即ち駿河の富士川、出羽の最上川の類是なり、 凡そ本土に在りては、東山道其脊梁に当るお以て、東海北陸の諸川、皆源お此に発す、即ち木曾川、天竜川、大井川、富士川、利根川の諸川は東海に流れ、筑摩川阿賀川、庄川等は北陸に落つ、而して阿武隈川、北上川、最上川等は奥羽の巨流たり、其他南紀の紀の川、熊野川、山陰の江川、由良川、山陽の東大川、西大川、九州の筑後川、求摩川、大野川、川内川、四国の吉野川、北海道の石狩川、十勝川、等皆海内の巨川と称す、其治水に関する事は、政治部水利篇に詳にせり、