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類聚名物考
地理三十一
利根川 とねがは 上野〈利根郡〉 利根川は、上野国西なる利根郡お経て流るヽ川故にその名あり、此川関東の大川にて、武蔵、下野、常陸、上総、下総の国の境お経て海に入る、その間幾十里といふ事おしらず、川末に至りては、その間に島々ありて、潮来(いたこ)などいふ、三所にてはその川はば七里有りといふ、本朝第一の大川なる故、俗に坂東太郎といふ、是に次ぎては西国の筑後川なるよし、それお次郎といふとかや、今また此利根川関宿より一筋わかれて、其間国府台行徳お経て海に入、枝川あり、是お新利根(○○○)といふ、此川お物積て近国より江戸へ運送なす故に、また江戸川(○○○)ともいへり、思ふに昔し角田川といへるは、此川の枝川にて、今の新利根にはあらで、栗橋川股などのほどより、一の枝川有りしが、それお雲ひしにて有るべし、今杉戸のこなたに、昔の角田川のあとヽてあり、その所なるべしと考へぬ、猶是は予が書る武蔵志料に、つまびらかに角田川の条にしるせり、事繁ければ此に略す、