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越後名寄
一川
信濃川(○○○) 国の中お流るヽ大河也、坂東の利根川、山州の淀川にも倍々せり、凡水上は信州の筑摩川犀川(○○○○○)也、筑摩は甲州堺、犀川は飛騨国より出て、川中島お過、松代の城下より四里下、福島村と長沼村の中間にて落合、前に出し清津川等も一に成、飯山お過て越後魚沼郡に来り、妻有の郷の内お流れ、川口の駅にて大野川と合して大水と成、妻有の郷山屋村の辺より山奥途程八里の間の川中に、二十七滝有り、中にもそたきと雲へるは難処なり、依之信州へ舟の通じなし、近曾打つヾき度々洪水して飛泉(たき)々々の高き巌は欠落て平らかに、深き淵は埋れて浅瀬と成り、そたきの外は扁舟筏の類は通路もすることにや、大野川(○○○)お舟にて下る間に、所々に難事とする場多し、中にも此川口の川合お第一とす、風有時、洪水の折節、必ず乗べからず、身お慎む人乗まじき事也、川合の神社、此岸に鎮座、さて右左の川々次第に落合流れ入て、魚沼、古志、三島、蒲原四郡の中お過ぎ、新潟の湊に到り、凡水面一里余、運送自由の専一の河也、