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伊勢物語

むかし男、つの国むばらの郡あしやの里に、しるよししていきて住けり、〈◯中略〉此男このかみもえふのかみ成けり、その家の前の海の辺にあそびありきて、いざ此山のかみに有といふ、布引の滝見にのぼらんといひてのぼりてみるに、其滝物よりことなり、長さ廿丈、ひろさ五丈ばかり成石のおもてにしらきぬに岩おつヽめらんやうになん有ける、さる滝のかみにわらうだの大さして、さし出たる石有、その石のうへに、はしりかヽる水は、せうかうじくりの大さにてこぼれおつ、〈◯下略〉