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日光山志

華厳滝 此飛爆は、中禅寺湖水より落来る、水路凡七八町、流れて滝口に至る、其水路も又一派の河の如く、幅十間余、或は七八間の所もあり、偖南湖より四五町流れ来りて板橋お架せり、是お南岸橋と唱ふ、長十間許、この橋は歌浜への通路なり、又は足尾へ掛り上州筋より詣るもの、足尾峠の頂上より岐路お径ること凡二里許の嶮お凌て援へ来る、また本道お経て中禅寺へ詣るものは、大平の道脇に左へ折て行べき平坦の小路あり、凡五六町余おたどりゆきて、此飛爆の辺に至る、是は大谷川の水源なり、高七十五丈といふ、此爆は東関第一の爆(○○○○○○)にして、滝口幅二間余、滝下は人従のかよふ所にあらざるゆえ、滝お眺望すべき所なく、滝辺より二三十間程も東寄に懸崖に差出たる危岩あり、藤蘿お捫て其盤の上へ下り、藤蘿お力にし持て頭お延ながら、飛流する水勢お覘見るばかり、直下する激勢、遥に下る水烟雲霧、盤渦として分ちがたし、華厳滝と名附るは、縁起にいふ、此山中有澗、則湖水流派、青巒高嵸紅日早照、清滝近遠、岩上繁花芬々、恰如涵錦似厳滝、因名華厳爆雲々、此華厳滝あるゆえ、又深沢に方等滝、般若滝の名も起れる歟、