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日光山志

裏見滝 荒沢滝(○○○)ともいへり、久次郎の大日堂より少しく行て、右の方に牓示あり、此所より山路の嶮お凌て西北へ廿町許ゆきて荒沢の山上に至る、夫より路お左に取て尖岩お渉り、右の方なる山崖お見れば、危石忽に落るが如き岩下お越て、滝の傍に至る、滋に荒沢不動の石像有て脇に籠堂あり、此所は滝の横手ゆえ、正面お望には滝の裏お潜り行て、向の方へ廻り見ることなり、偖其滝口は盤石凡一間余差出たる上より、爆水激流して水幅六七尺、其岩石の差出たる下は道幅四尺許、高さ六七尺あれば、滝の裏お潜り透るに患ひなし、誠に希代の飛爆なり、係る名勝なる爆水お、八景の内に入ざりしは、うらみといふ唱へお嫌はれたる歟、