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阿波名所図会

轟滝〈土人かれい滝となづく〉 海部郡にあり、此滝上に水分岩さしいで、千丈の巌両方より立かこひ、屏風おまるくたてたるごとし、滝の高きこと幾千尋といふ事おしらず、土人水上にのぼり、水分岩の辺より百尋の縄おたれて高程おはかりけるに、滝の半おすぎず、また百尋ましてたるヽに、其縄滝の半おすぎざるに、忽風縄おふきあげ、滝鳴雨降りてしることお得ず、これ名滝の故とぞきこへし、またおく山にて材木おきり、此滝よりおとして大川へながし出す、これ土人の恒の業なり、しかるに其材木毎日滝へながし落す事そこばくなるが、数日おふれども滝つぼにくヽみて、川下へ流れいでざる事あり、土人滝祭すれば、数多の材木一時に流れいづるとなり、滝の側に神社あり、轟明神と名づく、