[p.1232]
東遊行嚢抄
十三
筥根湖水 此湖水長さ三里許、幅或は一里、或三十町、或は二十町許の所もあり、北の方に湖水に落る所お海尻と号す、駿州之御厨と雲所より、荷物お海尻え上て、小船に積て峠の駅、并に元箱根の宿へ運送す、 此湖の水底には杉の大木多く沈てあり、何の代に沈みけるやらん、于今不朽して多く在と雲々、稲葉美濃守正則小田原の城主たりし時、此湖水の大杉一木お引上て、紹大寺の造営の用木とせらるヽ、其幅一丈余の杉板ありと里俗の説なり、