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西北紀行

凡そ淡海の湖は、勢田より貝津まで南北二十里、東西の広き所九里あり、今津と佐和山の間、東西最広し、湖の北の浜は、西は貝津、中は大浦、東は塩津なり、此三所皆湖辺に民家ある所にて、北の山お隔てヽ越前に隣れり、此湖の形は能く琵琶に似たり、堅田より北十七里は東西広し、琵琶の腹に似たり、堅田より勢田まで四里は東西狭く、一里の内外あり、譬へば琵琶に鹿首あるが如く狭し、勢田より宇治までは弥狭し、琵琶の海老尾に比し、竹生島お覆手に比すと雲り、故に此湖お琵琶湖と雲、大津の辺より山田矢橋の方お見たるよりも、堅田より北は甚だ広大にて、恰も大海の如し、今津より勢田へ十七里、大溝へ四里、京へ十七里、越前敦賀へ十里半、今津より貝津へ四里、貝津より敦賀へ七里半、此間荒茅山なり、敦賀より京へは二十七里半あり、今津より船にて竹生島に到る、湖上三里あり、