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東雅
二地輿
海うみ〈◯中略〉 潮おば、古語にはしほといひしお、倭名抄には、潮字読てうしほと雲ひけり、しほと雲ひし義不詳、うしほといふは海潮なり、古事記には、海塩としるしたりき、食塩おもしほといへば、其名お分ち雲ひしなるべし、朝お潮といひ、夕お夕といふと見えたれば、あさしほといふは潮にして、ゆふしほといふは夕にてこそあるべけれ、〈或説に、霜おしもといひ、潮おしほといふ、并にこれしむといふ語の転ぜしにて、其身に、しむおいふなりといへり、されど古語にしといひし詞には、白きおいふなり、霜おしもといひ、潮おしおといふが如きは、その色に因りしとこそ見えたれ、海浜の鹹土は、霜のおきし如くに其色の白きものなり、潮お煮し後に始て其色の白きのみにはあらず、しほといひしもといふが如き、もと是転語なるは勿論なり、〉