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常山紀談

太田左衛門大夫持資は、上杉宣政の長臣也、〈〇中略〉宣政下総の庁南に軍お出す時、山涯の海辺お通るに、山上より弩お射かけられんや、又潮みちたらんや、はかりがたしとてあやぶみける、折ふし夜半のこと也、持資いざわれ見来らんとて馬お馳出し、やがて帰りて潮は干たりといふ、いかにしてしりたるやと問ふに、遠くなりちかくなるみの浜千鳥鳴音に潮のみちひおぞ知る、とよめる歌あり、千鳥の声遠く聞えつといひけり、