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筑紫紀行

和田岬、からすざきなんどいふ岬おまはりて、午刻ごろ淡路の瀬戸といふ所おゆく、此瀬戸は幅五十丁ありといふ、淡路島よりは北、舞子浜よりは南にあたれり、舞子浜の方お望めば、浪際より小松ども数千本並立て、全く画景に異ならず、午刻すぐる頃風かはりて、〈坤の風也〉船人どもは帆綱引かへ揖とり直して、真切走といふ事おしてゆく、淡路の松帆のみさきの岩屋の鼻といふに、ふねおちかづく、この岬も小松ども幾千本ともなくおひしげりて、其中に小き堂有て、堂の前に石灯籠のならびたるも見えて、景色いとよし、