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下総国旧事考
四香取郡
香取海〈又香取浦とも雲〉今世は下利根川と呼べり、古へのさま、津の宮地方より西北は常陸行方郡、東北は鹿島郡まで見渡し、其間三里ばかりの一大江あれば、此には香取海と雲、〈江お海と雲はあたらぬことなれど、漢土にも海と雲湖もあれば、例なきにもあらず、〉彼には浪逆浦と雲ひし(○○○○○○○)と見ゆ、往時千葉忠常が下総に叛せし時、源頼義命お受け、兵お常陸の鹿島に会し、これお討ず、忠常海面に陣お張り、柵お構へ、幟差物透間もなく火しく立並べて雲々と、物に見えたるは、此下の方小見川地方の事なるべし、後世洲渚次第に増加し、数十の村落出来ぬれば、今は南辺は一条の流となり、下利根川と雲へり、北方は細流にて北利根川と雲、其間は田畝又入江となれり、