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太平記
十六
多多良浜合戦事附高駿河守引例事 小弐が城、已に責落されて、一族若党百六十五人、一所にて討れければ、菊池弥大勢に成て、頓て多多良浜へぞ寄懸ける、〈◯中略〉去程に菊池五千余騎お卒し、浜の西より相近付て、先矢合の流鏑おぞ射たりける、左馬頭〈◯足利直義〉の陣よりは、矢の一筋おも射ず、〈◯中略〉百五十騎参然として堅お破れば、菊池が勢誠に百倍せりといへども、僅の小勢に懸立られて、一陣の軍兵三千余騎、多々良浜の遠干潟お、二十余町までぞ引退ける、