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地理纂考
十三穎娃
吹上浜 此地加世田郷野間岬より、東北十里許なり、西北の大洋に対したれば、烈風吹ごとに、白砂空に捲き、海浜に堆積して山おなし、又これお吹散して、次第に遠く陸地に入り、林薮岡阜これが為に埋して、悉く銀山玉嶺の如し、中にも当郷池辺、高橋、大野の三村海浜に近ければ、白砂高く積りて、老松僅に梢お露はして、稚松に似たり、其景色清潔にして、四時雪月に向ふが如し、此中に蓮之峯といへる所、諸人遊観の地にて、吹上の中にも最高し、是に登れば沿海数里の吹上一望に帰す、此辺の数里皆斯の如しといへども、当郷高橋村の地殊に広く係れり、因て世に高橋の吹上と称す、