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伊勢参宮名所図会

阿古木浦 今津の城下岩田橋より巽にありといへど、古所詳ならず、〈◯中略〉 按るに、阿漕は地名にて、元は一堆の島にてありしなるべし、其証歌六帖、鯛の題にて、 あふことおあこぎの島にひく鯛のたび重ならば人しりぬべし、此歌お直して、いせの海あこぎが浦にひくあみのたびかさなれば顕れにけり、とさへ誤れり、あこぎといふ名の事、或雲、濃の字おこぎと読て、安濃浦お誤りたるか、又雲、あことは海子の事にて、きとは木なるべし、これは塩木おこヽに積たる事の多きによりて、あこぎとはいひたるにや、あこの証歌は、万葉三に、大宮の内まできこゆあびきすとあことヽなふるあまのよび声雲々、塩木は此浦に古歌多し、 新後拾 崇全法師 わすれなよ度おかさねて塩木つむあこぎが浦になれし月影 同按察使公敏、いかにせんあこぎがうらに袖ぬれてつむや塩木のからきおもひお、