[p.1324]
諸州めぐり
四紀伊
和歌浦〈和歌山より壱里あり◯中略〉 和歌のうらは、南おうけて入海なり、俗説に、此浦におなみ有てめなみなし、故に片男波といふ、此説非也、男波とは大なみなり、女波とは小波なり、われもとより其説お信ぜず、〈◯中略〉和歌のうらにしほみちくればかたおなみと古歌によめるは、俗説の意にあらず、しほみち来れば潟なくなるといふ意也、其故あしべの方にたづなき来れるといふ意明に聞ゆ、〈◯中略〉此浦の佳景聞しにまさりて目お驚せり、我此景色おむさぼりみて、海辺に躊躇し、去事おわすれて、ときおうつせり、〈◯下略〉