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応仁後記

前公方家御没落事 今滋永正六年の秋八月七日の夜、大地震火し、其れより以後七十余日、震動猶止ざりければ、国々の堂社、仏院、大夏、民屋、顚倒する事、其数お不知多かりけるに、此時天王寺の石の鳥居も倒れにけり、剰へ八月廿七日、同廿八日に、遠州の海辺火く波打来て数千の在家お流し捨て、死亡する者数お不知、陸地三十余町悉海と成て、旅人俄に船お設て往行す、其れより此所お今切の渡りと名付けり、