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続地震雑纂
大日本地震史料所載
伊勢南島古和浦津浪之事 十一月〈◯安政元年〉四日、五つ時過、沖より帰り来る漁船、古和浦口前処〈兼て運上お取村役所なり〉之前、魚お積並べ、直段お付け居る処へ、大地震に付、各居宅へ走り帰らむとするやいなや、大地より泥お吹出し、沖より山の如き大浪来り、人家之屋根之上お越〈江〉、一円海中に相成、諸人山へ登りこれお避く、猶去る六月十四日地震之時も、津浪お恐れ、諸人山に登り、七八日も山住居致し候故、此度も地震の初めより、誰教ふるとなく、子供より騒ぎ立ち山に登りし故、如斯之大津波にも死人少く、全神の御加護と難有存じ候よし、 一浪引し跡は、泥并砂お打上げ、又は波除け堤崩れ、家はさら也、屋敷地迄も跡形なくなり、又家は海岸の樹木にかヽりとまりたるもありたるよし、 右は古和浦平三郎といふ者、村之代参に取あえず両宮〈江〉参宮致し、浦の御師中西与太夫へ立寄り話したる趣也、〈◯下略〉