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本草綱目訳義
五十/獣
鮓答 むまのたま せきふん
是は走獣牛馬肝胆の間にありと雲り、諸獣にあり、別て馬に多し、馬によつて数多きもあり、一つあるもあり、一つあるは丸く大也、又小きもあり、多はこにだ馬にある、一そにして大に真丸也、乗馬にあるは数多し、大小あり、是は多きは一所にあつまりある故、形正丸からず、三角も四角も扁きもあり、小はふんと一所に交り下る石糞と雲、ごいし、或はけし或はごまほどあり、是は糞中に交りてしれ難し、気お付ればしれる、馬の積気の如し、初は小く年ふれば次第に大になる、破ると外より中迄幾重も重りあり、けいらんの皮の如し、皮の厚さの物也、色は白も鼠もうす茶赤み帯る黒みあるあり、はだへは、けいらんの如き光あるなり、又さめはだの如きあり、又まき雲の如きもやうあるあり、こにだ馬にある形大なるも然り、全氐石の如くに重し、世上に是大なるお竜の玉など雲、虎の玉など雲て貴べども、皆馬の玉の大なるなり、大は西瓜ほどあるあり、馬に不限牛にもあり、牛のは珍し、病牛にあり、大も小もあり、碁石の如きもあり、鼠色にして光るもあり、真黒もあり、又牛にもかぎらず、鹿の腹中、猿、狐などにもあり、蕃来はへいさるばざると雲、へいたらばさるとも、へいさらばさらとも、へいたるばさらとも、皆誤り雲也、へいさと雲石のこと也、ばざると雲はけものヽ名なり、此獣の腹中にある石なり、是お紅毛人勃泥波斯(ほる子なはるしや)国より取来る、是は馬の玉とはちがい、丸きもあれども多はけいらんの如し、ひつなりにしてうす茶色多し、紅毛人の持来るは、牛馬の玉とちがい功もよし、之お削り火にやけば乳香の香ひあり、是はばざると雲けものヽいる処、乳香多して食用すと見ゆ、 一名 赭丹〈蓬窻日錄〉