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重修本草綱目啓蒙
三十三/畜
牛黄 ごわう〈通名〉 一名土精〈外台秘要〉 西黄〈黴瘡秘錄〉 吐月華〈証治準縄〉 丑玄 〈万病回春〉 西牛黄〈本経逢原〉
古より牛黄おごわうと読み来るは、牛膝、牽牛の例なり、牛黄は舶来あり、形小く円にして木槵子(むくろじ)の大さの如し、或は小にして豆粒の如く、蕎麦の如きあり、色黄なり、破れば内も黄色にして小白点あり、外より内まで重畳して片おなすこと鮓答(せきふん)の如し、軽虚にして微香あり、重き者は下品なり、指甲お揩て黄色に染まる者お真とす、蘇容も但揩摩手甲上透甲黄者為真と雲、破て色は黄なれども片お成さず、体重くして白点香気なきものは蒲黄お用て膠水に溲成し偽る者なり、本草原始に、真者有宝色有層次、体軽微香透甲、偽者色黄無光彩体重と雲、本経逢原に、置舌上先苦後甘、清凉透心者為真と雲り、今和産あり、亦用べし、薬舗にて真の牛黄と呼ぶ、舶来より大にして一二寸なる者もあり、色微黒お帯る者もあり、破れば層次白点香気ありて軽く、舶来に異ならず、外に皮ありて大小数箇お包む故、円あり、扁あり、稜ある者あり、皆〓牛の心肝胆中にあり、和にては死牛より取る、その初は皆黄水にして乾て塊おなすなり、 本邦にて昔より牛の額上より出る毛塊お貴て浮屠家に霊宝とす、その形円にして大さ一寸余、長毛塊おなして内に小硬心あり、白色褐色数品あり、牛の毛色に随ふ、これおうしのたまと呼ぶ、転じて牛王と雲、古来牛黄おうしのたまと訓ず、故に世医も亦二名の同きに惑ひ、遂に毛塊お認て牛黄と為し用るものあり、甚誤れり、其毛塊は牛贅にして水牛(くるまうし)の額より出て落るものなり、或はその白色なるお偽て白狐のたまと呼者あり、又他獣の皮或は尾お以て偽造するもあり、又一種堅硬にして無患(むくろじ)子より稍大なるあり、又俗に民家の門上の牛玉宝命と書する符お牛王(ごわわ)と雲ふ、此は本その土地の神社より出す符なり、故に生土宝印と書するお、今は多く法華宗の寺院より此符お出し、誤て牛玉宝命と書す、此は生字の下の一画お土の字の上に連ねて牛玉と為し、宝の字の下に人の字お添て命と為すなり、この符に牛玉の字ある故に、寺院に牛贅お宝とするなり、