松屋筆記

七十九

水牛
本草綱目〈五十の下巻〉獣部牛の条の集解に、時珍曰、牛有〓牛水牛二種、〓牛小而水牛大、〓牛有黄黒赤白駁雑数色、水牛色青蒼大腹鋭頭、其状類豬、角如担矛雲々、文選〈八の巻〉司馬長卿上林賦に、沈牛麈麋、注に、張揖曰、沈牛水牛也、能沈没水中雲々、史記司馬相如伝に、沈牛麈麋、注に、漢書音義曰、沈牛水牛也、正義曰、麈似鹿而大、按麋似水牛雲々、漢書司馬相如伝上に、沈牛麈麋、注に、張揖曰、沈牛水牛也、能沈没水中雲々、玉篇〈二十三の巻〉牛部に、牨(かうは)古郎切水牛、また〓直(ちん)深切、水牛雲々、五音集韻正字通に、牨は〓字之訛、旧註訓水牛、改音剛非雲々、また〓称人切音沈、海牛、相如上林賦、沈牛註、張揖曰、水牛能没入水中、〈○中略〉格致鏡原〈八十六の巻〉牛部詳類条に、異物志周留水牛也、毛青大腹鋭頭、青尾、鬱林異物志、州留者、其寔水牛、蒼毛豕身、角若担矛、衛護其犢、与虎為讐、広志、州留項上肉大如斗、似橐駝、日行三百里雲々、また群書考索、牛有二種、一曰沈牛、牛之善水者也、一曰沙牛、俗亦謂之黄牛雲々、勝之助漂流記に巴旦(ぱたん)国、水牛は牛より大に相見え、毛の色は牛より薄く御座候、角抔も牛より太く大きに相見え候、車抔お曳せ申候、用事済候時は、水中へ這入、顔ばかり出し居申候、食物は牛同様にて候雲々、与清曰、水牛二種あり、家畜の水牛と枕牛と也、〓牛一名は周留、〈鬱林異物志〉字亦作州留、〈広志〉一名は海牛、〈正字通〉一名は潜牛〈県宇志〉といふ、虎と戦ふ猛獣にて、水牛(うし)の皮(かは)の楯などに作れるこれ也、勝之助が西洋巴旦国にて見しは、家畜水牛なるべし、勝之助天保元年寅三月、備前国岡山お船出し、漂流して、西洋巴旦呂宋(はたんまねら)などにいたり、同三年辰七月帰朝せるほどの記一巻あり、