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円珠庵雑記
駒は小馬なれど、唯うまと同じくよめり、〈○中略〉
馬、〈うま〉美、うまの義に名付くるか日本紀に、よも人おうま人といへるにて思ふべし、涅槃経には、馬は世の財なる故に、其肉おくはずと見えたり、
真淵雲、牛も馬につぎて人の用おなせるお、から人は好みてくへば、財とてくはぬにはあらで、 味のわろければ成るべし、馬はけものゝ中によき物にて、うまけものといふか、いにしへは何 にてもよき事おうましといへり、うま人といふもよき人てふ意なり、 涅槃経雲、或言、如来不聴比丘食十種肉、何等為十、人、蛇、象、馬、驢、狗、獅子、猪、狐、獼猴、其余悉聴、 史記秦本紀雲、初繆公亡善馬、岐下野人共得而食之者三百人、吏遂得欲法之、繆公曰、君子不以畜 産害人、吾聞、食善馬肉不飲酒傷人、乃皆賜酒而赦之雲々、この事韓詩外伝、呂氏春秋、説苑等にも みえたり、