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源平盛衰記
二十八
源氏落燧城事
加賀国の住人、林六郎光明が嫡子に、今城寺太郎光平と雲者あり、〈○中略〉八寸に余りたる大栗毛と雲馬に、白覆輪の鞍置てぞ乗たりける、此馬きはめて口強くして(○○○○○)、国中には乗随へる者なし、林六郎光明が郎等に、六動太郎光景と雲者計ぞ乗従へける、今度も光景おのすべかりけるお、打出んとての時、光平父に逢ふて、今度は大栗毛に乗て軍に出んと雲ふ、父光明此言お聞て、弓取は口の強き馬(○○○○○)に乗ては、必犬死する事あり、不可有事也、光景お乗せよと雲けれ共、光平は弓矢取る身は軍場こそ晴にて候へ、此日比労り飼置きて、此大事にのらではいつか乗るべきとて、父が諫にも随はず、〈○下略〉