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東遊雑記

松前には馬の数多ある所にて、少しき荷物にても馬に付る也、其馬お見るに日本の馬よりは小なりといへども、力至て強く、日本の馬の二駄も一匹にて付て、嶮しき山坂お越るに屈せる体更になし、汗抔の出る事見へず、しかも橋おうつと雲ふ事おしらず、石原お通行せるに爪お損ふ事なし、御三所とも評判せらるゝには、此馬小なれども、軍馬に用ひて然るべし、江戸にても人々の知らざるも不審也、海内お放れし遠国にて行程遥成ると、乗馬にならざる事の有にやと評せし也、