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御法宝鑑

畜養之事
畜は許六切養也 凡馬お養に、多は厩お暖にして南に面、夏は棚お凉して北に面ふ、頭お平に繫げ、厩器お潔浄にせよ新草お柬択し、豆殻お篩簸す、熟料は新水お以て浸淘し、放冷して方に之お食しむ、其馬に飲せしむるに、惟新水に宜し、時お以てせよ、切に宿水凍料陳草沙石灰土蛛糸諸雑毛髪お忌、若之お食ば即痩瘁して病お生ず、且夫日は則其形状お観、夜は則其喘息お聴、草料の多寡お勘考して、疾病の有無お詳察す、溺清翼潤は則病なし、斯所謂る畜養の道也、
又曰、凡馬お御育するに、春夏は未明より騎て馳驟お慣熟し、秋冬は日出より騎て行駆お調習す、且夫飲食時あるにあらざれば、馬羸繁息なし難し、昼は午申の時に槽お進め、夜は戌子寅の時に槽お進む、一日一夜に五次、四時其別なし、春夏は穀料お減じて芻水お増、秋冬は芻水お減じて穀料お益、御人日夜馬の側お去ず、其形状お察て食料の多寡お度れ、御人若志切ならざれば瘖瘂言こと能ず、或は飽或は飢お忽肥満し羸痩す、抑馬は飲食度に合ひ、乗騎節に中り、洗浴法に応て而て後に馳驟則あり、三の者若其一も欠るときは、百馬に一も繁息すること能ず、学者意お留て子細にせよ、
又曰、凡牧養するに、未明に馬お轡らに移して頭お高く繫ぎ、馬刷お以て身体お掃除せよ、日々に洗浴お失すること勿れ、若四蹄及び鬣毛の上りに淤血生ぜんとするが如きは、洗浴の後速に食塩お傅よ、総て洗浴足ざるときは、則気血流通せず、脈絡閉塞して身体詰屈す、抑乗騎洗浴芻穀の三の者全く調ふに非れば、駿馬と雖ども疾歩すること能ず、馭人心お切にせよ、