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御法宝鑑

五労之事
五労は筋労、骨労、皮労、気労、血労お謂也、筋労は久歩するに因て之お得、其状終日駆馳し放て〓ばざる者是也、其病たるや、則血蹄間に凝滞して痛て気お凌ぐ、骨労は久立するに因て之お得、其状〓と雖も、而も時に起ざる者是也、其病たるや、則癰腫お発す、皮労は久汗して乾ざるに因て之お得、其状驤て起と雖も、而も毛お振ざる者是也、其病たるや、頬脊之お摩ば熱する也、気労は汗未息ざるに乗燥て飲お飼に因て之お得、其状毛お振と雖も、而も即噴気せざる者是也、其病たるや、苦気して宣通せず、緩く之お繫じ櫪上に餽草お遠くべし、乃噴也、血労は駆馳節なきに因て之お得、其状噴気すと雖も、而も即溺せざる者是也、其病たるや、則発て強て行、高く之お繫て飲食せしめず、少時くすれば乃大に溺する也、
七傷之事
七傷は寒傷、熱傷、水傷、飢傷、飽傷、肥傷、走傷お謂也、寒傷は冬月宿水お飲し、寒処に繫に因て之お得、其病馬おして毛樵て塵お受しむる者是也、熱傷は暑月に乗騎遏多し、時ならずして飲食するに因て之お得、其病馬おして煩懆悶乱せしむる者是也、水傷は騎こと廻が故に、便停滞おなして散ぜざるに因て之お得、其病馬おして腸胃に積聚お結して、病お成しむる者是也、飢傷は馬飢こと盛なるに、更に大走せしめて、喘息未定ざるに、争然として飲食するに因て之お得、其病馬おして心脾の気結し、草料消せざらしむる者是也、飽傷は飽ときに乗騎して再便飲食せしめ、馬草お喫こと太猛なるに因て之お得、其病馬おして腸胃に積聚し、糞行遅澀ならしむる者是也、肥傷は馬膘大にして力行するに因て之お得、走傷は馬極て走こと大過するに因て之お得、二の者は皆馬おして肉断脂消気続ざらしむ、