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北条五代記

清水太郎左衛門大力の事
太郎左衛門、〈○中略〉扠又奥州より出たる岩手鴾毛(○○○○)と号す駿馬お持たり、尾かみあくまでちゞみ、九寸あまりにて強馬なり、長久保より、鷲巣の嶺へは、上道五里程あり、此馬お心見んため、甲冑お帯し、旗おさし、卯の刻に長久保お乗出し、鷲巣お目がけ、むち打て、野原お真直に馳行有様、たゞ逸物の鷹八重羽の雉お見て、升かきの羽お飛がごとし、鷲巣の嶺へのり上、いきもつかせず引返し、艮刻長久保へ帰馬するに、あせおくださゞる名馬也、