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擁書漫筆

和名抄毛群類部に唐韻雲㺜(だう)深毛犬也和、名無久介以沼(むくげいぬ)、空穂物語菊の宴の巻は、じゞゆうの角おれたる牛のたぐひなりや、中将うちわらひてむくいぬのあひだの耳のやうにて、字鏡集八の巻犬部に、尨(ばう)、〈むくいぬ〉色葉字類抄無の部動物の条に、㺜(だう)〈むくいぬ、多毛犬也、〉〓(ぢよ)、〈むくいぬ〉尨(ばう)、〈亦作尨〉羊犬(やうけん)〈已上同〉新韻集牟の部、平に、〓(ぢよ)〈むくいぬ、犬多毛也、〉尨、〈むくいぬ、犬多毛、〉〓、〈むくいぬ〉平他字類抄動物部平声に、犾、〈むくいぬ〉童蒙容韻江三に、尨(ばう)、〈むくいぬ〉倭玉篇下巻、犬部に、㺜(だう)、〈むくいぬ〉尨(ばう)、〈むくいぬ〉倭訓栞牟の部に、椋鳥、ひえ鳥に似て群飛す、鷃の類也、むくわりは別種也、小むくといふも味よろしなど見えし、むく犬、むく鳥も、また毛羽の細弱なるによれる名、人のむく毛も、同義なるおおもふべし、